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研究紹介

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我々のグループは、イオンを用いた量子情報処理に向けた研究を行っています。我々が用いているカルシウムイオンは、カルシウム原子から、最外殻の電子を一個取り去ったものです。正の電荷を帯びているために、外部から電場を印加すると強力に制御することができます。この性質を利用し、イオントラップという「容器」に捕まえておくことが可能です。捕まえたのみでは、イオンは激しく熱運動をしている状態ですが、レーザー光を用いて熱を取り去ってやると(レーザー冷却)、空間中にほぼ完全に静止させることが可能です(下図)。

この状態では、イオン(原子)が自身の熱運動や周りからの擾乱の影響をほとんどうけずに真空中に保持され、さらにそれらのイオン一個一個を個別に観測できるという、非常に特殊な状況が実現されています。いわば、ミクロの世界の事物に直接アクセスできる状況になっているということができるのですが、このとき、ミクロの世界の物体が備える性質としての「量子性」が顕わになってきます。

例えば、「量子跳躍」と呼ばれる現象が観測されています。イオンの中の電子は、「量子性」のために決められた離散的なエネルギーしかとることができません。外部から入れた光によってイオン中の最外殻電子がエネルギーを変えることがありますが、イオントラップ中のイオンに対しては、この変化が起こる瞬間が実験によってとらえられています(下図)。

近年、「量子性」を備える物体の性質を利用して、従来型計算機を飛躍的に上回る計算性能を実現する量子計算や、計算による予測が困難な複雑な物理系の振る舞いを別の制御しやすい物理系を用いてシミュレートしようとする量子シミュレーションが提唱され、盛んに研究されていますが、このような応用のために、上記のようなイオントラップ中のイオンの特性を活用することができます。